2019年現在、創業8年目。これまでの事業を通して、実現し続けていることってなんですか?
「『望む暮らし方を選択できる社会』ですね。
例えば『子どもを産むと働きづらい』のが今の日本の都市部ではスタンダード。『仕事と育児は頑張って両立するもの』みたいな。 障害があるから、子どもがいるから、女性だから、お金がないから、とかそういったバックグラウンドが不利になってしまう社会なんですよね、今は。
頑張って必死でする生活ではなくて、ライフステージや家庭環境の変化に対応できる、柔軟な暮らし方が選択できるのが当たり前の社会だといいなと思っています。」
そのビジョンを実現するために課題だと感じていることはありますか?
「2019年度のはじめに、これまでの事業の結果でもありいちばんの課題だなと思う出来事がありましたね。」
というと?
「スタジオplus+の利用者の方に寄付のお願いをしたんです。
経緯としては、スタジオplus+が利用する『放課後等デイサービス』という国の福祉制度では、事業所に入ってくるサービスの金額が3年に1度、改定されるんです。
そして2018年度にその改定があり、スタジオplus+の収入が15%程度減りました。
具体的には1教室あたり常勤職員1名分の人経費程度、約30万円の減収になりました。
4教室あるので、年間で1400万程度の収入減です。
つまり、これまで常勤職員が3名で運営していた教室を2名体制で、同じ業務を行う状態になる。」
それはかなり大変なことですね。
「そこで、減収した分を利用者の方に寄付という形で応援してくれないか、と協力を求めました。
でも結果的に5%くらいの人にしか行動にうつしてもらえなかったんです。
スタジオplus+に通ってくれているご家庭には
『サービスの利用者と提供者という関係ではなく、困っていることを一緒に解決する仲間でありたい』
と思って教室を始めたのに『7年経った現在はそういう関係ではない』という現実に突きつけられた感じがしました。
私自身が教室運営に携わっていた時は、仲がよい保護者には日々の教室運営で困っていることを相談したり、学校や医療機関とのやり取りで知らないことを教えてもらったりと、サービスを提供するだけでなく私自身が助けてもらえることも少なくありませんでした。」
「寄付に関しては、家庭の経済状況や説明不足など、色んな理由があって集まりませんでした。
でも、結果的に私を含めて教室で働く責任者は『自分たちが求めていた関係性は創れていなかったんだ』ということを痛感する機会となりました。
NPOは、サービスを提供するだけではなく、課題を周知して、課題解決の担い手を増やして、課題を解決していくことが存在意義なんです。」
その役割を果たしてなかったことを突きつけられた出来事だった。
「これまでの数年間は第二創業期として、学習支援だけではなく、どんな背景があっても暮らしやすい「地域づくり」まで領域をひろげる「事業の拡大」を第一にしてきたので、当然かもしれません。
だから次の5年から10年は、ダイバーシティ工房で働く人はもちろん、サービスを利用している人、寄付やボランティアで関わる人にも
「なぜこの事業をやっているのか」
「世の中にどんな変化を起こせるのか」
「変化を起こすためにあなたはこういう役割をしてほしい」
ということを伝え、それに共感してくれるコミュニティを育てていきたいと思っています。これからが第三創業期です。