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【vol.2】目の前の人の「生きづらさ」に向き合って-事業の始まりは社会課題ではなく出会った人たちの生活にある-



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2010年父が創業した自在塾を継ぎ、2012年に「特定非営利活動法人ダイバーシティ工房」として法人化。


現在、自在塾のほか、発達障害児専門の学習塾、コミュニティスペース、保育園を運営しています。


それぞれの役割や各事業の関係性を教えてもらえますか?


「それぞれのサービスを3つの事業に位置づけています。


1つめが発達支援事業。

発達障害児を対象とした放課後等デイサービスの学習教室『スタジオplus+(スタジオプラス)』です。


2つめが保育事業。

これは企業主導型保育の『にじいろおうちえん』と小規模認可保育所の『そらいろおうちえん』。どちらも0〜2歳までの保育園です。


3つめがアウトリーチ事業。

これは『地域の学び舎プラット』というコミュニティスペースで行っている『自在塾・カフェやイベント・レンタルスペース・シェルター・無料の学習教室』を全部ひっくるめて、アウトリーチ事業としています。」



アウトリーチという言葉が聞き慣れないのですが、どういう意味ですか?


「そのまま訳すと『手を伸ばす』という意味です。


具体的には、援助が必要であるにもかかわらず、自発的にアクションできない人たちに対して、積極的に働きかけて支援の実現をめざすことを指します。


『地域の学び舎プラット』は、これまでのメイン事業であった学習支援だけではなく、何か困ったときにいつでも相談できたり、誰もが気軽に来れるように、カフェやレンタルスペース、イベントなど複合的な機能をもたせているんです。」


 

法人沿革

  • 1976年:代表不破の父が「自在塾」を設立

  • 2010年:不破が自在塾の運営を引き継ぐ

  • 2012年:NPO法人化、ダイバーシティ工房設立/発達障害児専門の学習教室「スタジオplus+国府台教室」オープン

  • 2013年:「スタジオplus+市川駅前教室」オープン

  • 2014年:「スタジオplus+市川中央教室」オープン

  • 2016年:「スタジオplus+瑞江教室・本八幡教室」オープン

  • 2017年:コミュニティスペース「地域の学び舎プラット」オープン

  • 2018年:企業主導型保育園「にじいろおうちえん」オープン

  • 2019年:小規模保育所「そらいろおうちえん」「スタジオplus+船橋教室」オープン

 


塾を継いだあと、発達障害児にフォーカスしたサービスを始めたのはなぜですか?


「きっかけは、自在塾で出会った生徒なんです。


私も講師をしていたのですが『だんだん教えづらいな』と思いはじめて。」




「授業の邪魔をしちゃう子がいたんですよ。そのころは生徒6人に対して講師が1人で教えていて。


大声で問題の答えを言っちゃうし、横の子に消しゴムを投げたりしちゃう。注意してもやり続けるので困ってしまって。


小学校で教員をしている母親に相談すると『それは発達障害の特性があるのかも』って言われました。


そこではじめて発達障害のことを知ったんです。いろいろ調べたらその子の特徴がすべて当てはまる。


生徒のお母さんにも話を聞いてみると『そんな状態だから塾を転々としていた』と。どこにいっても『もう来ないでください』と言われていたそうです。


実は自在塾で『勉強ができない』という子の半分は、発達障害の特性があったり、知的な遅れがある子だったんですよね。」



複数人での授業がムリなら、マンツーマンにしよう。でも、もともと安く設定している授業料なので赤字になってしまう。


「とくにひとり親の家庭が多かったこともあって、授業料を変えずに済む方法がないか色んな情報を探していたところ、児童福祉法にもとづいて国から補助金を受けられる制度があることがわかりました。


その制度を使うと、利用者は所得状況に応じて授業料の1割負担でサービスを受けることができるんです。


そこで誕生したのが『スタジオplus+』ですね。」


スタジオplus+は現在、入会希望者が200名以上出るほどニーズがあり、2012年から2016年にかけて毎年新教室を開室します。





2017年にはコミュニティスペースをオープン。


「コミュニティスペースというサービスにしたのは、今までの学習塾というスタイルではカバーできない子どもたちがいることに気づいたからです。


自在塾もスタジオplus+も決まった曜日の決まった時間に授業を受けます。


でも、毎週決まった時間に来るのが難しい子もいれば、勉強の前にまずは家から出て人と丁寧に信頼関係を築く必要がある子もいる。


『誰かに話を聞いて欲しい』

『人がいるところでご飯が食べたい』

『何らかの事情があって家に帰れない』


そんな気持ちに応えられる場所をつくろうと思って立ち上げたのが『地域の学び舎プラット』です。


そこでは軽食つきの無料学習教室をひらいています。カフェの利用やレンタルスペースとしても使えるので、誰でも気軽に利用できるんです。」




コミュニティスペースをつくるきっかけは、事業を通して出会った子どもたちだけではなく、不破自身が感じていた息苦しさにもあったそう。


「子どもが2人いるんですが『母親でもなく、組織の代表でもない、誰かのための役割から開放された自分の時間が欲しいな』って。


どんな人にも、学校や家庭といった役割やふるまいが限定された価値観や文化の中ではなく、自分の違和感や直感を信じ、それを後押ししてもらえる環境に出会える場所が必要なんだと感じています。


プラットは、自然体の自分でいられる場所、そして人と繋がれる場所として、地域の人と育てていきたいなと思っています。


実際にカフェやイベントは地域の方が手を上げて運営してくれているんです。」





そのさなか、不破にとって衝撃的な出来事が起こる。


それが2018年にオープンした保育園「にじいろおうちえん」につながることに。


「2017年2月に第二子が認可保育園に落ちてしまったんです。


これはもう絶望でした。


職場も近く、親と同居していたので、2人目の子どもを産んですぐフルタイム復帰できると思ってたんですよね。


でも市役所からの『保育園に入れない』という通知。


見た瞬間、本当に絶望的な気持ちになりました。


『今までのようには働けないかもしれない。やりたいこと、やらなきゃいけないこともたくさんある。子どもが生まれて幸せなはずなのに、どうしてこんな思いしないといけないの』って。」



絶望の中知ったのが、内閣府が始めた「企業主導型保育事業」だった。


「色々と調べていくうちに』これはやるしかない!』と思いましたね。


これは企業が設置主体となって、自社や提携した企業の子ども、さらに地域の子どもを預かることができ、かつ、認可保育園並の助成があるという制度。」



保育園の運営は未知の領域。


「でも塾やコミュニティスペースを立ち上げる過程で色んな人に助けてもらった経験が後押ししてくれました。


これまでの事業を通してわかったことですが、小学校に上る前の、子育ての早いの段階から安心して相談できる人が見つかると、その後の子育てで困ったことがあっても不安感が軽減されやすいんです。


そう考えると保育園は子育て家庭が最初に出会う社会。そして小学校にあがるまでに6年近く親も子どもも関わる場所です。


だから子どもや保護者が保育園を卒園した後もつながれる『地域のプラットフォーム』をコンセプトにした保育園をつくることにしたんです。」



 
 

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